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第1章 電池が不要な無線通信技術EnOceanの基礎知識
近年,IoT(Internet of Things,モノのインターネッ
ト)やM2M(Machine to Machine)といった言葉に代
表される応用技術が,人々の生活をより便利にしてく
れるものとして注目されています.このIoTやM2M
を支える技術の中で,ワイヤレス・センサ・ネットワー
クの果たす役割はとても大きく,センサと無線通信技
術を組み合わせた機器の活用やサービスが様々な分野
で広がってきています.
例えば,昨今問題になっているエネルギー問題や少
子高齢化対策などの社会的課題を解決する手段の一つ
として,すでに商用の機器やサービスも出始めており,
近い将来には非常に多くのワイヤレス・センサ・ネッ
トワーク機器が,私たちの身の回りにあふれることに
なると予想されています.
ワイヤレス・センサ・ネットワークは,外界の状態
や動作を検知するセンサ・デバイス,無線通信デバイ
ス,電源回路,それらをコントロールするマイコンな
どで構成されます.通常,一つのシステムの中に多数
のセンサ・ノードが使われることになるため,それら
への電源の供給が課題になります.
さらに,メインテナンスが簡単で環境負荷も少ない
ことも重要です.そこで,電池を使用せずに,その代
わりにエネルギー・ハーベスティング
1
による発電を
行うことでワイヤレス・センサ・ネットワークを実現
する方法が盛んに議論されています.
このような社会的背景や技術動向のもと,環境にや
さしい電池レス無線通信技術である“EnOcean(エン
オーシャン)”が,海外では数多くの建物に採用されて
デファクト・スタンダードになりつつあります.電池
を使わずに無線通信を実現する“EnOcean”は,その
価値が認められて数々の受賞歴のあるグリーンな技術
であり,近年日本においても急速に注目を集めていま
す.
本章では,電池レス無線通信技術“EnOcean”とは
一体どのような技術なのか,EnOcean通信について
概観し,そのコンセプトや特徴について紹介します.
1-1 EnOceanGmbH
という会社について
電池レス無線通信技術“EnOcean”
2
の技術を提供し
ているのは,ドイツのミュンヘン近郊に本社を構える
EnOcean GmbHという企業です.図1-1は,同社の
商標とロゴです.
EnOcean GmbHは,1990年半ばにドイツのシーメ
ンス社(Siemens AG)の中央研究所でエネルギー・
ハーベスティングの研究を行っていた研究開発メン
バーがスピンオフし,シーメンス社から設立資金を得
て2001年に設立されました.
同社はエネルギー・ハーベスティングの先駆け的な
存在であり,エネルギー・ハーベスティング技術を使っ
た無線通信デバイスやシステムに関する基本特許なら
びに多数の関連特許を保有しています.その技術は現
在では世界中で活用されており,オフィスビルや産業
機器,オートメーションなど,様々な方面へ応用され
ています.
現在,EnOceanの推進団体として「EnOceanアライ
アンス」が設立されており,EnOceanの普及ならびに
基礎編
1
2
エネルギー・ハーベスティングは,周囲の環境からエネルギーを収穫(harvest:ハーベスト)して電力に変換する技術のことで,
「環
境発電技術」とも呼ばれる.
“EnOcean”はEnergy+Oceanに由来しており,社名であり無線通信の名前でもある.
堺谷 智
電池が不要な無線通信技術
EnOceanの基礎知識
第
1
章
エネルギー・ハーベスティングでIoTを実現する
図1-1 EnOcean の商標とロゴ・デザイン
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