特集 モータ特性はどのようにして決まるか

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No.8

SRモータは,基本的に永久磁石を使わないモータで,
高速回転・高出力を最大の長所に,構造が簡単である
ので耐久性も高いという特徴がある.こうした特徴か
らもっと使われていいモータなのだが,ブラシレス
DCモータに比べると普及が遅れている.騒音がある
などの短所もあるが,SRモータの数学モデルがまだ
確立されておらず,現在はベクトル制御等の精緻な制
御手法が適応できないことも一因かもしれない.とは
いえ,SRモータは可能性を秘めたモータであり,注
目度は高い.ここでは,SRモータの動作原理,制御
法の基本を解説する.

(編集部)

はじめに

●モータの歴史
 モータ(Electric motor)の歴史は古く,ちょうど
200年ほど前,ハンガリー人のイェドリク・アーニョ
シュ(ハンガリーは姓・名の順)によって発明された
のが,世界で最初のモータといわれています.これは
永久磁石を使わないロータもステータもコイルを採用
しています.
 それから,直流モータ,誘導モータ,同期モータな
ど,多種多様なモータが開発され,それぞれのモータ
の特徴を生かす形で,家電製品や産業分野において多
岐にわたって,実用化されています.
●最近注目されている同期モータ
 早くから動力源として実用化されてきた直流モータ
や誘導モータと比較して,構造・原理上においてエネ
ルギー効率とエネルギー密度に優れる同期モータは,
最近その特徴を生かしてサーボ・システム,ハイブ
リッド車(HV),そして電気自動車(EV)などの駆動
用モータへの応用が加速しています.
 一方,自動車メーカでは,今後の自動車開発には欠
かせないモータ設計やパワー・エレクトロニクスに精
通している技術者が不足しており,企業内教育におい
てモータ・パワーエレクトロニクス技術者の養成に力

を入れているという噂をよく耳にします.
●同期モータとしてのSRモータ
 本記事では,同期モータに属しているリラクタンス
応用モータの中で,HVやEVの次世代モータとして
期待されている「SRモータ」の構造,動作原理,そし
て制御方法を解説します.
 ただ,SRモータは新しいものではなく,100年以上
も前から知られたモータです.ただ,後述するよう
に,いろいろ欠点もあったのですが(例えば騒音があ
る等),モータ制御技術の進歩によって,短所を弱め
長所を生かす制御方法が発明される可能性があるので
はないか,ということで最近でも注目され続けている
のです.

1.SRモータの動作基本原理

●リラクタンスの変化をトルクに換えるモータ
 SRモータ(Switched Reluctance Motor)は,トル
クの発生メカニズムにおいて,“リラクタンス

(Reluctance)”の変化のみを利用するモータです.

 ブラシ付きDCモータや,ブラシレスDCモータは,

「コイル=電磁石」と「永久磁石」との「吸引・反発力」

を利用して回転力(トルク)を得ています.
 一方,SRモータは,「コイル=電磁石」と「鉄」との

「吸引力」のみを利用して回転力を得ています.磁石

同士の吸引・反発力は使えないのです.

■ 1.1 リラクタンスとは何か

●リラクタンスとは磁気抵抗のこと
 リラクタンスとは,なかなかイメージしにくい概念
ですが,一言でいうと“磁気抵抗”のことです.「磁気
回路における磁束の通り難さ」を表しています.
 磁石に近づけると磁性体は,「リラクタンス(磁気
抵抗)が小さくなる方向に移動する」という性質があ
ります.SRモータでは,この性質を利用しています.
つまり,SRモータでは,磁気抵抗が小さくなる方向
にトルクが発生し,回転します.

大山 和宏

第1章

永久磁石を使わず高速回転する 

「SRモータ」

~構造,動作原理,制御方法~